楊さんは、私が台北で常宿にしている“慶泰大飯店(Gara Hotel)で客待ちをしている運転手の1人です。5年前のある出張の時、ポッカリ日スケジュールが空いた(空かせた?)ので、一度行って見たかった台湾の東北部の海岸(野柳)に行こうと思い立ち、ガイドブックで行き方を調べたところ、ホテルから20分位の所に有るバス停から、野柳の近くまでゆきのバスが出ていると書いてあり、それではと早速ホテルの前でタクシーを拾いそのバス停まで連れて行ってもらいました。 その時の運転手が楊さんでした。然しながらその時バス停はあるものの、目的地に行くバスが見当たらず、結局そこから基隆行きのバスに乗り、電車・バスを乗り継ぎ目的地の近くに辿り着きました。

 楊さんは、結構親身になってバス停の周りで色々な人に尋ねてくれ、その親切さがとても印象に残っていました。その時はそれで終わったのですが、それから2ヵ月後ホテルの前でタクシーに乗ろうとしたところ、偶然客待ちをしていた彼と再会しました、私は多分この前の運転手ではないかと思い声を掛けました、“2ヶ月前にあんたの車に乗ったけど、覚えているかい?”彼も“あーあの時の・・・!あの後野柳に行けたかい?”と私の事を覚えていました。それ以来、仕事でちょっと遠い処行く時や帰国のとき空港までタクシーを利用する時は、彼の車を乗るようにしていました。

 彼は、アリガトウ、サヨウナラ・・・程度の日本語しか話せず、会話はいつも中国語でした、彼は普通の友達のように話しかけてくるので、私のレベルでは彼の話す中国語は半分も理解できませんし、彼も私の話す中国語は恐らく230%程度しか分からないと思いますが、結構コミュニケーションは取れていました。彼はよく食事に誘ってくれ、時たま付いて行くと、そこは日本人だけではちょっと行けない台湾の地場料理の店も有ったりして、いい経験もさせてもらいました。その時はいつも彼の奢りです。私が払うと言っても決して払わせてくれません。

 今回も、以心伝心というのか出発の一週間前に突然彼から電話がかかって来ました。その時は、以前の部下と川崎で飲んでいたところ携帯が鳴るので、取ったらいきなり中国語でしゃべられ、初めは誰か分からず面食らいましたが、暫くして彼と分かり話し始めると、取り立てての用事は無く“暫く会っていないが元気にやっているか”と言う程度の話でした、こんな事で日本に居る私にわざわざ電話を掛けてくれる人なんてそうはいませんよね?本当に感激してしまいました。

 その時は未だ澎湖島に行くことが決まっていなかったので、“もしかしたら行くかも知れない、その時は必ず連絡するよ”とだけ話して終わりました。数日後、台湾に行くことが決まったときには真っ先に彼に電話をしました、彼は非常に喜んで台北空港へ迎えに行くからと言ってくれましたが、台北市内から空港までは小一時間かかるので、仕事の邪魔をさせては申し訳ない思い、“兎に角着いたら電話するから!”とだけ告げ電話を切りました。

8/19台北空港に到着し、バスに乗ってから彼に電話をし、6時ごろホテルに着くので6時半にホテルの前で会おうと伝えました。6時半にホテル前で会うと、彼は早速近くで食事しようとホテルの直ぐ傍にある店に私を連れて行き、店員にメニューを持ってこさせると、中を開いてどれにすると言うので、楊さんは?と言うと俺は先ほど友達に誘われ食べてきたので、コーヒーだけ飲むと言うので、私もコーヒーだけでいいよ!と言いましたが、何か食べろと聞きません。それで私は食事をし、彼はコーヒーを飲み色々な話をしました。

 彼が言うには、お前は未だ年取っていないので何か仕事をしなければ駄目だ、そうでないと呆けてしまう。そして今までは仕事で世話になったから、これから俺の車に乗るときお金は要らないから必ず連絡しろ、澎湖島から戻ってきて帰国するときは俺が空港まで送るからと言ってくれました。28日に台北に戻り30日帰国する旨告げたところ、生憎常連の客の予約が入っていてその日はどうしても台中へ行かねばならず、私がホテルを出る時間までは戻ってこられないので、1日帰国を延ばせないかなどと真剣に言うので、“今回はいいよ!”と言っても、“もしかしたら、キャンセルになることもあるので、その時は必ず連れて行くよ”とまで言ってくれました。そんな彼とは、もう5年近くの付き合いになります。因みに彼は私より1歳年上の亥年(60歳)、性格はとても温厚で、且つ明るく、私にとっては友達であり、又台湾の兄貴のような存在です。

 彼は運転手になる前は、自分で事業をしていたそうで、中国で服を作らせて台湾に持ち込んで販売をしていたが、結果芳しくなく運転手になったとの事。又娘さんはアメリカに留学して、今はアメリカで仕事をしているそうで、今年も奥さんと一緒にアメリカに娘に逢いに行く計画を立てているそうです。

 台湾の人は、それ程生活が豊かでなくとも子供に大きなチャンスを与える人が結構多いようです。以前にも同じような話をしてくれたタクシーの運転手がいました。日本人だったら、子供の留学なんてある程度お金に余裕が無ければ考えませんよね!
在校生からの投稿   澎湖島/阿甘語言中文科でのミニ・ミニ留学
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